ギャングスターパラダイスについて |
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「ギャングスターパラダイス」というカードゲームの評について、作者トンマーゾ氏(@Gang_Para)からMentionを受けた(https://twitter.com/Gang_Para/status/314551434802786304)ので返答しようと思ったのですが、やや長くなってtweetでは収まらないのでここに書きます。
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ルールの記述に関して致命的なのは、ゲーム目的の根幹に関わる「命カードのロスト」に関する処理があまりに曖昧なことです。
「すべてを失う」とはどういうことでしょう? ルールWiki(いま確認しました)では記述が改善されていますが、それでもまだ穴が残っています。
ロストした命カードは公開でしょうか?そうだとすると「このカードは誰にも見せれない」ルールとの優先順位は?
それとも非公開、もしくは殺した相手にだけ公開でしょうか?
命を失った後、同色の相方が勝利したとして、これは自分の勝利にもなりますか?
ライフが場に落ちるのだとすると、それは拾うことが可能という意味になりますか?
また、4人以下でのプレーの際、ルールの記述をそのまま解釈すると、配られなかった命カードは山札に行くことになり、誰かが手にすることになりますが、この解釈は正しいですか?
(ルールの他の箇所の記述は、これが正しいことを裏書しているようにも、誤っていることを裏書しているようにも読めます)
正しいのだとすると、2陣営の命カードを同時に持ちうることになりますが、これはOKですか? また、ライフを1枚だけ失った場合の処理はどうなりますか?
上記の点に比べれば瑣末な点ですが、ルールの構成にも問題があります。表紙の頁のすぐ近くにTIPSが来ているのを見た時には、乱丁を真剣に疑いました。
上記の命がらみの処理で何が正しいか不明なので、以降については正しいルールで遊んでいない可能性が高いという前提になりますが、一応ゲームそのものについてもコメントをしておきます。
「ゲームを前に進める構造がどうなっているのか解らない」と書きましたが、無論カードは手番に1枚ピックする上、交換/交渉によって手を進めることは可能である以上、セットコレクションとしてのゲーム性が存在しうることについては一応理解できます。ただし、命カードが導入されている以上、このゲームの主眼はセットコレクションではなく(おそらく"BANG!"あたりの影響を受けた)正体秘匿のチーム戦ものとして解釈されるべきでしょう(ですよね?)。
しかしこのゲームを正体秘匿物として捉えた場合、ゲームの推進力がほとんどどこにもありません。たとえばBANG!であれば(私はそもそもこのゲームを高くは評価していませんが)、ゲーム開始時点でシェリフは公開されているので、全員の行動の指針は明確になっています。つまり、シェリフを殺すか、シェリフを守るか。この目的に邁進することにより勝利へ近づくというメリットと、それが自らの正体を確定させていき身を危険にさらす、というデメリットの間に天秤があり、この天秤の傾きがダイナミックに変化する中、これをどれくらい正しく読み、自らの行動をシフトさせていけるかがゲームの眼目になっています。(人狼だと…私は人狼も別段それほど評価してないのですけど…また少し駆動方式が異なり、特殊能力と状況ごとに「自然なアクション」が決まってくるので、アクションの結果と状況から特殊能力を推理することが一定程度可能になり、これによりゲームが展開します。)
しかしこのゲームでは、自らの陣営に関して、行為によって正体を徐々に明かしていくというフェーズが存在せず、宣言するかしないかしかありません。(Death陣営には「実際に公開する」があるので3値ですが、Death陣営は赤にとっても青にとっても敵なので、BANG!のような推進力は発生しません)
そして実際のところこのゲームはどちらかというとセットコレクション的なゲーム性を持っているので、自らが属する陣営が、少なくとも最終盤まではプレーに影響を及ぼしません。相手が誰であろうと、相手の必要なカードを渡し、代わりに相手から必要なカードを受け取ればよいということになります。そこには「陣営の公開と目標への邁進のジレンマ」が全くありません。
この意味で、このゲームを正体秘匿系のゲームとして評価することはできないので、セットコレクションとしてのみ考えざるを得ないのですが、このルールはセットコレクションとしてはあまりにも意思決定箇所が不足しています。本当はゲームの主題はセットコレクションではなく正体秘匿なので、これ自体は仕方ないのですが、そうするとどこにも遊びどころがないという結論になってしまいます。
投稿者 z57u9x | 返信 (0) | トラックバック (0)